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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

<はじめに>
 今回、僕は伊藤先生を通じて2004517日から521日の5日間SIUFamily Medicineで実習をさせていただきました。僕がFamily Medicineに初めて興味を持ったのは学生時代に臨床実習を回っていたときでした。内科をはじめいくつかのマイナー科にも興味を持った僕にとっては、Common Diseasesを主体として幅広く患者を診ることができるFamily Medicineが自分が将来やりたいことであると思うようになりました。それゆえ今回アメリカを訪れ、本場のFamily Medicineを体験できたことは本当に貴重であり、この実習を行ってくださった伊藤先生をはじめ、面倒を見てくださった方たちには本当に感謝の気持ちで一杯です。このレポートでは日記形式で僕が毎日行ったことを中心に、そのほか気づいたことを書きましたが、今後SIUやアメリカに実習に行かれる方、Family Medicineに興味がある方の参考になれば幸いです。

516日(日)>

昼過ぎにChicagoからSpringfieldに到着。着陸直前に飛行機の窓から眺める景色に家がほとんど見えず、畑ばかりで驚きを覚える。空港から宿舎まではタクシーで約$10。畑と緑にあふれる、のんびりとしたSpringfieldの街中をタクシーで走りながらアメリカ中部に来たことを実感する。約1週間滞在したBest Innは病院やFamily Medicine Centerへも歩いていける距離にあり、宿泊費はなんと6日で約$170と安かった。部屋はバス/トイレ付、クーラー、テレビもついていてとても快適に過ごすことができた。洗濯は1階にあるLaundryを使用。75¢で動く洗濯機と乾燥機があった。(洗剤は売っていないので、日本から携帯用のものを持っていくことを勧めます。)朝食付でしたが、僕は主に病院のカフェテリアを利用していました。
 夕方、伊藤先生と初めて出会う。一緒に病院のカフェテリアで食事をしながらアメリカのFamily MedicineResidency、実習の概要についての話をしていただきました。

以下は毎日の実習の報告になるが、実習は毎日午前と午後に分かれており、基本的にはClinic(外来)にしてもRound(入院患者のケア)にしても1人の先生に一緒に付く形で実習を行いました。初めに付いた先生の名前と実習場所を記した。

517日(月)>

午前:Dr.McCoyResident3年目)−Clinic

 OA、小児WellCheck、うつ病や高血圧の患者のフォローアップ等を見る。Commonな病気を相手にするFamily Medicineらしくさっそく様々な問題を抱えてやってくる患者を診ることになった。慢性疾患の管理、小児科、整形疾患、産科の患者、幅広く診るのがFamily Medicineである。SIUではレジデントは患者を診た後必ず別室で控えているAttending Physicianと呼ばれる先生に報告をし、サインをもらうことになっている。Attendingが1人1人の患者に対し、適切な診断・治療が行われているかどうかを確認すると同時にResidentの教育の場にもなっている。どの患者に対してもこの指導が行われ、Residentが十分に学べるような仕組みになっている。

 午後:Dr.ItoResident2年目)−Clinic

高血圧、GERD、小児のWellCheckPre-natal, Pre-opeの診察等の患者をみる。

何人かの患者のHistory/Physicalを取ってみるが、中には英語の聞き取りがかなり困難な患者にも出会う。言葉の壁は最初からあることは当然わかっていたが、改めて患者を目の前にして痛感した。患者の訴えがわからなければ何も始まらない。英語はできて当たり前というレベルにならなければいけないことを再確認した。その中でDr.Itoが英語を話し、患者の問診をするだけでなく、治療について患者とDiscussionをいとも簡単にする姿には感銘を受けた。こんな風に自分もすらすらとできるようになったらいいなぁと思いながら見ていました。

518日(火)>

午前:Dr.GleasonAttending Physician)−Clinic

Attending PhysicianResidentの教育という立場にあると同時に自らもClinicを行う。複数のAttendingが順番でResidentの指導を行う。SIUではFacultyと呼ばれる指導する人間の数が豊富であり、素晴らしい教育の質を保つ一因となっている。
 Clinicでは最初に小児の原因不明の臀部の膿瘍を見た。IncisionDrainageが行われたが、このようなMinor ProcedureFamily Medicineのおいては日常茶飯事である。患部の局所麻酔の際にその男の子が泣き叫ぶのをお母さんとナースとみんなでなだめながら、処置を進めていくのが大変であった。しかし本当に痛かったのだろう…。そのほか、高血圧、WellCheck、術後の創部感染等の患者をみた。

午後:Dr.NelsonResident2年目)−Clinic

不安障害、内分泌疾患、COPD等の患者をみる。Family MedicineClinicは予約制であり、基本的には慢性、亜急性の疾患を見ることが多い。SIUFamily Medicine Centerと呼ばれるClinicが行われる建物には個別に分かれた診察室があり、それぞれの診察室には診察ベッド、洗面台、机、椅子、耳鏡、眼底鏡、血圧計、その他の簡単な処置に必要な器具等がそろっていて、日本のカーテン一枚で仕切られた診察室とは大いに異なる。1人の患者に対する診察も、患者の訴え、医者の技術経験にもよるが2030分かけることが通常である。時間を取ることで丁寧な問診、理学所見を取ることができ、ひいては疾患のみならず全人的な医療にもつながる。それでも複数の問題を抱える患者には一回の診療でひとつの問題に対して取り組むのが精一杯ということもしばしばである。

519日(水)>

午前:Dr.NelsonResident2年目)−RoundTeaching Service

僕はSIUに来るまでFamily Physicianが入院患者の管理をここまでするとはまったく知らなかったので、それを知ることができたのはとてもよかったと思う。SIUFamily Medicineが担当する入院患者の数は毎日30人以上に及ぶ。Family Medicineがどこまで入院患者を持てるかというのはその病院にもよるそうだが、SIUではFamily Medicineの力が昔から強く、入院患者の管理もFamily Medicineが大きく担うというのが現状のようである。入院患者の管理もしっかりと学びたいという人にはSIUのプログラムはよいのだろうという印象を受けた。朝のラウンドでは以前から入院をしている患者、前日にAdmissionされ、担当になった患者の診察を行い、その後Teaching Serviceと呼ばれる会合で報告をする。ここでもAttending Physicianたちが必ずつき、指導を行っていた。しかし実際に僕が見学をさせていただいた印象では“Teaching”というのは名ばかりで、どのResidentも問題なく1人で患者を管理し、さらにその上でDiscussionをしているというレベルの高さに驚いた。

午後:Conference

Family Medicine Centerで昼食を取りながら3つの講義を受ける。各方面からの専門家を呼び、Residentの更なるレベルの向上を目標として定期的に行われているようであった。小児・青年期のスポーツによる頚椎損傷の初期治療、膝のスポーツ外傷、Resistance Trainingについて講義を聴く。どの講義もhands-onなものばかりでとても役に立った。

521日(木)>

午前:Dr.NelsonResident2年目)−RoundTeaching Service

胸痛、アルコール性心筋障害、膿瘍の入院患者をみる。

午後:Dr.ItoResident2年目) Nursing Home

病院の裏にあるNursing Homeを訪れる。Nursing Homeとは日本の老人ホームのようなところで多くの患者は痴呆を抱え、自宅での生活が困難となりNursing Homeにくる。特に問題が無い限りは定期的に医師がNursing Homeを訪れ、患者の健康状態を確認する。Dr.Itoが担当する患者は特に急性期の問題を抱えた患者はいなかったが、特に痴呆を抱えているような患者には、直接患者から話を聞くことは難しいことも多く、医者よりも普段からより多くの時間患者と接し多くのことを知っている看護婦たちからの情報は非常に重要で、彼らとの連絡をおろそかにしないことが大切だと感じた。

522日(金)>

午前:Dr.OlsonAttending Physician)−Acute Care ClinicACC

ACCFamily Medicine Center内にある急性期の患者を中心に診るところである。Clinicとは異なり、患者は当日に予約をしてやってくる。そのため診た患者も頭痛、かぜ、腹痛、結膜炎、膝痛等であったが、ACCではClinicとは異なり一人の患者に多くの時間を割くのではなく、てきぱきと患者の病状を把握し、重症と重症でない患者を見極め、患者を帰していく。Dr.OlsonSportsMedicineの専門家でもあり、膝に問題を抱えてた患者が来たときの、所見のとり方などは見事であった。ここでは一番多くの患者を独りで見させていただき、普段の慢性疾患を抱えた患者を多く診るクリニックとは違って、急性期の疾患を見ることができまた違ったおもしろさがあって、ACCの方も見学できたことは大変よかった。

 午後:Dr.WhelanResident1年目)−Clinic

Dr.WhelanResident1年目を終了しようとしている時期であったが、Teaching Serviceでの姿、Clinicでの姿は自分からとても卒後1年目とは思えなくらい素晴らしかった。自分も1年後にはここまでできるようになれればいいなぁと思った。1年目のResidentは初めのころは半日で2から3人の患者を診ることから始まり、徐々に患者を診る数が増えていき、1年目が終わるころには、7人くらいになるようであった。この日は小児のWellCheckPre-natal, 指の外傷、足の外傷、Annual Pap Smear等をみた。

<その他 そして最後に>

初めてのアメリカ、初めてのfamily medicineということで新鮮なものばかりで1週間ととても短かったが、大変内容の充実した実習がおくれたのではないかと思っています。

今回の滞在中に7月よりSIUで研修を開始される原田先生にも偶然お会いすることができ、伊藤先生と3人で食事に出かけたり、買い物に出かけたりととても楽しい時間を一緒に過ごすことができました。伊藤先生お勧めのステーキ屋OutBacksではアメリカのステーキのおいしさにとてもびっくりし、ステーキを食べるのならアメリカである!という新しい認識を得たことも大きな収穫でありました。7月からSIUでは日本人Resident2人ということになるが、Resident1人いるだけでもすごいことなのに、2人もいるということは素晴らしく思った。将来の日本の医療、Family Medicineの発展を考えた場合に、日本人がアメリカに来て学ぶことはよいことであるだろうし、このSIUを起点としてさらに日本人のResidentがさらに増えることが期待できるのではないでしょうか。

自分自身も将来はアメリカでResidencyをすることを希望していますが、その中で実際に日本人のResidentがアメリカのResidentに引けを取ることなく働いている姿を見ることができたのは、大変勇気づけられました。また実際のFamily Medicineの現場を見ることで、自分のやりたかったことの具体的なイメージがより広がったという点でも今回の実習は大変意義のあったものだと思っています。自分はまだ臨床医としてスタートを切ったばかりですが今回の経験を生かしてよりより良い臨床医になれるよう努力していきたいと思います。

最後にあらためて、この実習を行うことを可能にしてくださった伊藤先生をはじめ、お世話になったスタッフの方たち、そして原田先生に感謝の気持ちで一杯ということを記してこのレポートを終わりにしたいと思います。