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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

初めに私は医学部に入る前から家庭医療学に大変興味があり、常々アメリカの医療現場を見てみたいと思っていた。そんな折に伊藤先生のサイトを発見し、今回SIUで見学の機会を得る事ができた。

一日目
午前中はレジデントのDr. Syedaに付き、外来を見学。私はここ数年研究生活を送っていたので久しぶりの外来はとても新鮮だった。これまでの体験記にも多く書かれていた通り、なんといっても患者1人にかける時間が十分長い。日本の流れ作業的な医療とは全く異なる。理由の一つとしては、日本であれば普通学生や看護士が行うような問診もすべて医者が行っていることがあげられるだろう。その裏にはおそらく患者とのコミュニケーションを大事にしていることが根本にあるのかもしれない。患者の症状は様々で、ADHDから不正性器出血までバリエーションに富んでいた。なんと言ってもプラスティックの膣鏡を初めて見られたことに感激した。これに関しては、存在自体はアメリカで医者をしている人から聞いて知ってはいたが、実際に見た事がなかった。しかも膣内がよく見られるようにライト付きだったことにも感心した。プラスティックの膣鏡に関しては診察する側から賛否両論があるが、女性側からしてみればdisposableな方が気分がいいと思われる。Dr.Syedaは不正性器出血の女性の治療方針についてAttendingDiscussionしていたが、その時のやり取りは面白かった。私は産婦人科なのでAttendingの指示した治療方針と同じ考えだったが、彼女はどうもそこが理解できなかったようで、ずっと質問の連続であった。それでもAttendingは嫌な顔ひとつせずきちんと説明して最後まで彼女に付き合っていた。すべてにあてはまるわけではないが、日本では聞きすぎないことを美徳とされることもあるので、このやりとりを見ているのはとても気持ちがよかった。

昼は伊藤先生と初めてお会いし、カフェテリアで昼食をとった。短い間ではあったが、自分が学生時代どのような志を持ってどのように勉強していたかを話してくださり、感銘を受けた。アメリカでレジデントをしようと決めてから実際それがかなうのに3年はかかるという。伊藤先生が卒業と同時にアメリカに来る事ができたのはそのことにたまたま早く気づいただけと言われていたが、それが重要であり、実際それを実行できる医学生は日本では皆無に近いと言っても過言ではない。やはり気持ちの持ち方が秀でていたのであろう。周りで遊んでいる人達を見ながらモチベーションを高く持ち続けるのは本当に大変である。

午後はDr.Whelanに付き、外来見学。彼女は二人の子持ちであり、17時半までに子供をDay careに迎えに行かなくてはならないので、午後はあまり患者を入れないで欲しい、とナースステーションで話していた。また、子供の迎えが10分遅れる度に$10とられるけれども、たまたまそこで働く人が彼女の患者で少し多目に見てくれるとの事。日本だったら大方そのような個人事情は仕事場において無視されがちではあるがアメリカではきちんと実行されている。午後は8人予約が入っていたがそのうち2人は現れず、17時前に診察が終わっていたので他のドクターを少し手伝ってから帰って行った。日本でも少数ではあるが託児所を備えている病院がある。コスト面からいっても大変だろうとは思うが、(ある病院は託児所維持のために年間1千万円費やしているという。)そのような病院が増えれば女性医師もより働きやすくなるのではないか。その後たまたまAttendingの方と話す機会があり、出産を見たいと言ったら自分は水曜日の日中の分娩を担当しているので分娩があったら呼んでくれることになった。さらに本日の当直の先生を紹介してもらい、そこで自分の携帯番号を渡して分娩時には呼んでもらうように頼んだ。

2日目

 昨晩は一晩中分娩を待っていたが、結局一件もないまま朝をむかえてしまった。午前中伊藤先生につき、外来をみせてもらった。本日の患者層は思った以上に黒人が多く、私は黒人英語に慣れていなかったので最初聞き取りに苦労したが、だんだん慣れてきて面白かった。それにしても、日本語での診察説明も大変なことが多い中で英語で行うのは本当に大変であろう。特にDictationは大変だと思う。伊藤先生はDictationに慣れるのに半年ほどかかったと言っていたが、それでも日本人の中では早い方だと言う。やはりここでいかに英語が大事かがよく理解できる。
午後はDr. Deladismaについて外来見学をした。彼は診察のペースがとてもゆっくりであったが、性格が良くユーモアのセンスもあり、仕事場では人気者のようであった。 診察時には産科のエコーを2回程させて頂き、とても充実していた。
夜は愛知医大から来ている医学部6年生3人、伊藤先生と夕食を共にした。これまでこのプログラムに参加した人達の話や、今後の先生の予定など少々突っ込んだ質問もして、とても楽しかった。

3日目           

午前中はDr. Thompsonについて外来見学。彼女はとてもてきばきしゃべり、外来がスムーズに進むのでとても気持ちがいい。やはり患者さんは殆どアメリカ人なので、アメリカ人にしかわかり得ない事(昔はやったテレビ番組など)で冗談を言い合ったりしているのを聞くと少しくやしくなる。しかし、彼女の患者さんへの扱い方を見ているととてもレジデント2年目とは思えない。貫禄がある。昼はピザを食べながらセミナーのようなものがあった。今月は整形外科である。それが終わって3時半ころからACC(Acute Care Clinic)を原田先生が担当しているということで、一緒につかせてもらった。原田先生はレジデント1年目であるが、自分で余裕がない、と言いつつも診察しているところをみたら、関心するところは沢山あった。1年目でここまでできるようになれば、随分気持ちいいだろう。 夜は原田先生、愛知医大の学生2人とともにタイ料理を食べにいった。原田先生は最初冗談を言っては質問にふざけて答えていたが、ひとたび真面目になると本当に広い視野を持ちながら話してくださったのでとても参考になった。色々な人達の意見を聞く事はとても楽しい。

4日目           

午前中、午後ともに伊藤先生についた。午前は外来、午後はCCHCの外来であった。CCHCの外来では妊娠初期の妊婦さんに十分時間をとって医者が丁寧に今後のことを説明していた。日本では診察のみ医師で、残りの生活態度や今後の受診予定などは主に助産婦が説明する。Family Practiceでは患者さんのかかりつけの医師としてコミュニケーションを大事にしているため、日本のような流れ作業的な診察とはひと味違ったものになっているのだろう。また分娩に関する訴訟も産婦人科より少ないのは、ハイリスクを診ないのみならず、普段からの患者とのコミュニケーションがしっかりしているからだという。夜はDr.Itoと愛知医大の学生とともにChinesebuffetで食事をしながらレジデント生活につきいろいろお話をうかがった。

5日目

今日は最終日である。午前中Dr. MarkeleyについてACCの外来見学を行った。彼は以前ERのドクターであった為か、うまく患者をさばいていた。風邪症状がひどくて来た人もいれば、5日前から手にいぼができている、というACCの医者からしてみればとんでもない(?)理由で来る人など様々な患者を見た。その間伊藤先生が電話にてトリアージを行っていたが、お昼にはとても疲れているようであった。今日はどうもあたりが悪かったみたいである。それでも午後には心機一転して外来をこなしていた。
電話というのはある程度慣れないと英語で会話するのは難しい。日本語でも電話で患者と話していて症状や緊急性などを正確に把握するのは大変である。実際患者が来て診察をしてみて全く大したことなかったり、その逆に何でもっと早く来なかったのか?と思う事は多々あることである。それを英語で行うのは本当に気を使うと思う。
午後の外来が終わってから、最後に伊藤先生に多くの貴重な話を聞かせて頂いた。

最後に5日間という短い間であったが、少しでもアメリカ医療を垣間見ることができて良かったと思う。今までに何度も聞いてきた事だが、アメリカの医学教育は本当にすばらしく、日本のそれとは比べ物にならないという。診断基準、治療などがすべて

マニュアル化されていて統一されているため、前回自分が診ていない患者さんにあたった時など困る事は殆どないという。SIUFamily Practiceは本当に皆が優しく驚いた。

日本で留学生が自分の科に来ても言葉の問題もあるせいか、多くの医局員が殆ど無視状態なのにくらべ、多少文化の違いもあるのかもしれないが気軽に声をかけてくれる。ナースも非常にFriendlyでびっくりした。私が今回本当に感心したのは、文化や習慣も違うこの国で医学部卒業と同時にレジデントをはじめた伊藤先生が、おそらく最初は四苦八苦していただろうにも関わらず、日本からの見学者の面倒までみる余裕があったことである。このような伊藤先生の余裕(?)のおかげで見学の機会を得る事ができて大変感謝している。