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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

1214日火曜日

朝からオリエンテーションがあるというのでうっかり間違えてメモリアル病院に出向いたところで家庭医学の部門は見当たらず、完全に建物を間違えていることに気付きました。ここスプリングフィールドの家庭医学プログラムは宿泊場所であるBest Innよりセイントジョーンズ病院に向かって4th street, carpenterの交差する場所に存在するFamily Medicine Centerがメインになります。主に外来用の施設ですが2階にあるオフィスでレジデンシーコーディネーターのガレクトさんに面会し、あとはその人に施設を案内してもらいました。その日の午前中はプログラムにおけるリクルート担当とされるDr.グリーソンにつき、主に見学という形で外来を見ることになりました。糖尿病や高血圧など成人病の方が多く、複数の問題を抱えたり服薬の問題があったりという感じでした。

 

お昼をメモリアル病院のカフェテリアで済ませたのちはDr.ロビンスについて再び外来につきました。この先生はチーフレジデントの一人で話をしてみると大変気さくな方でしたがこの日は書類作業で忙しくあまり相手をしてもらえずでした。引っ込んでいるのももったいないので彼の患者さんを何人か診察させていただきましたがADHDなどの精神科疾患を持つ方や脊髄空洞症オペ後で頚部痛を訴える方などバラエティーに富んだ患者層でした。

 

夜は時差ボケがあって辛かったのですがDr. アルバースの家にてジャーナルクラブがありそれに参加しました。レジデントが比較的クラシックな文献を発表しそれをスタッフの先生が批評するという形でしたがどうやらかなりEBMの専門家がいるらしく議論の内容は白熱していたものと覚えています。ただ僕は疲れがたまっておりあまり記憶がありません。

 

1215日水曜日

午前はクリニックにてDr.グリーソンにつき彼の患者さんを一人でみていくことになりました。腰痛の患者さんが二人ほどみえましたのでDr.グリーソンのみているところで問診並びに診察をすすめました。その後は虫歯や副鼻腔炎、尿路感染など諸々の問題を持つ患者さんをみながらSIUでの診察スタイルに慣れていきました。気づいたことは社会の底辺層にいる人たちは職につけず、すでに十代で父親の異なる子供を幾人も産み育てており、それを何世代にもわたって繰り返しているという点です。日本では考えられない人種ですがこの国にはそのような方々がおり、そのことに心を痛めている医師も多いようです。

 

午後はクリニックでのレクチャーの日でした。この時点でレジデント3年目の伊藤先生とお会いすることができました。レクチャーはお昼を食べながらのものでしたが始めは皮膚科の先生がニキビについて、それに引き続きフェニックスからきた講師による同性愛者のクリニック案内、最後は妊娠時の皮膚病変についてのものと多岐に渡るものでした。レクチャーの終了後伊藤先生にここのプログラムの説明をしていただきましたが、豊富な患者層がみられ、レジデント教育に携わる教員の数が多く、それぞれの方面で専門家を備えていること、そしてアカデミックにも教育的にも優秀な人材を備えていること、などの話をうかがうことができました。やはりレジデンシーをはじめるにあたって英語が大変だったことや、レジデンシー終了後の話などたっぷり話を聞かせていただきました。

 

1216日木曜日

午前中は伊藤先生とクリニックで患者さんを診ることにしました。関節痛、腰痛、ADHDや頭痛などの問題を持つ方がみえましたが、僕が最初に患者さんを約15分ほどで診察し、それを伊藤先生にプレゼンテーションし、意見を仰ぐという形で進めていきました。ひとつの症例につき必ず一つ以上のポイントを教えてくださいましたので僕のレベルに合わせたフィードバックをいただくことができました。こちらのプログラムではレジデントが学生を教えることはあまりなく、教員にその仕事を一任している場合が多いそうです。

 

この日の午後は他施設での採用面接がありましたので休みをいただきました。

 

1220日月曜日

本日はSIUのレジデント採用面接がありました。先週一週間教員の先生方と話す機会が幾度かありましたのでそれほど緊張することもなく時間は過ぎていきましたがスタッフのみなさんは候補者に対して大変親切であり、外国人であろうと大歓迎という姿勢でした。プログラムのよさを知る上でも貴重な体験となりました。元々SIUというところはイリノイ州南部の医療過疎地での医師育成のために設立されたところであり、その先駆けになったのが家庭医学とのことです。現在のDr.アルバースがディレクターに就任してからはプログラムの評判も上昇し今現在全米12位だと伺いました。プログラム自体評判がよいのですが教員、レジデント含め親しみやすい雰囲気だったと思いました。おそらくプログラムが家庭医学であること、そして田舎であることなどもそのような雰囲気の人たちを呼び込む一因になっているのでしょう。

 

1221日火曜日

本日よりメモリアル病院での入院病棟を見せてもらうことになりました。朝9時にカンファレンス室にいくと1,2年のレジデントと学生さんたちが少し疲れた顔をして朝食をとっていました。家庭医学プログラムのローテーションのうちで最も大変なのがこの入院病棟だそうですが通年であるわけではなく、一年目であれば3ヶ月などというように一定期間のローテになるそうです。特筆すべきは入院患者層の広さであり、小児から大人、妊婦さん含め家庭医学で受け持っている患者さんであれば入院中も責任をもって管理するそうです。スタッフ医師とシニアレジデントの2人が指揮をとり、まずはカンファ室での座りながらのラウンドを行い、入退院の決定や検査、治療の方針などを話し合いました。その後はシニアレジデントのDr.ネルソンにつき話し合われた患者さんの退院作業を見せていただきました。僕自身は採用試験の疲れが出ていたため無理をせず午後は休むことにしました。

 

1222日水曜日

9時半よりカンファ室での症例の議論を見学させていただきました。この日はターミナルケアの患者さんで気管挿管をどうすべきかということを話し合い、その後スタッフからご家族に対しての説明が行われました。よくいわれることですが医学部4年生のレベルの高さには驚かされます。入院患者のケアに積極的に関わっているため実践的な力をつけており、入院作業や日々の管理は独力で行えるレベルにいるようでした。知識的な面はそれほど日本の学生と違いませんでしたが実務能力ないし経験がやはり優れているという印象を受けました。

 

午後は昼食をとった後クリニックに向かいDr.伊藤と共に外来患者を診せていただきました。婦人科検診やADHD、糖尿患者さんで蜂窩織炎が悪化した症例などを自分で診た後伊藤先生にプレゼンし、それぞれでフィードバックを受けることができました。その後も伊藤先生より外来教育に対する熱意を伺うことができ、また独自に立ち上げた外来教育のためのHPについてもお話を聞くことができました。米国に比べ日本の外来教育は時間や金銭面での束縛のためか十分とはいえない状態でありそれを何とかしたいという考えをお持ちのようでした。そういえば日本で受けた僕の学生実習のときも外来で教育を受けた記憶は一切ありません。恐ろしいことですね。

 

1223日木曜日

午前中は場所を移ってセイントジョーンズ病院のカフェテリアにて朝食をとりながらのカンファに参加しました。まず始めにレジデントの一人から成人ADHDについての雑誌レビューを行った後再び症例提示とそれに対する議論が行われました。

 

午後は伊藤先生と共に産科当直を体験させていただきました。産科ローテーションは一年に12ヶ月ほどありその間は1日おきで当直を行い出産管理や妊婦のトリアージをおこなうそうです。実際この日は一例の出産とトリアージを見せていただきました。トリアージは胎児心拍数が突如除脈になるというものでスタッフのDr.ユアートにコンサルトしたところほぼ間違いなく機械が母体の心拍数を拾っているのだろうという結論を出されました。それと同時に母親の病歴などからして胎児に異常があるという確率は大変低く、これに対して特別処置をとるのはよろしくないというコメントもいただきました。伊藤先生曰くこのDr.ユワートは専門がEBMでありこのプログラムの中において最も博識なスタッフの一人であるということでした。5分ほど話をうかがいましたが事前確率と検査の根本にある概念を明確に示してくださり、目からうろこが落ちた思いがしました。

 

1227日月曜日

午前中はカンファ室でのラウンドに参加し、午後は伊藤先生と共にクリニックで外来患者さんを診せていただきました。症例としては婦人科検診やSTD患者さん、交通事故後で背部痛の方や湿疹持ちのおばさんなどを診ることができました。

クリニック終了後、日本人レジデントの伊藤先生、原田先生と共に夕食を食べに行きました。本場アメリカのステーキ屋さんでボリュームも味も抜群でした。食事をしながらの話でしたが今後の進路やSIU、家庭医学のよさや展望などの話を伺いました。日本にいるときはわかりませんでしたが米国に一度出てしまうと以外に選択肢はいっぱいあるのだという印象を受けました。

1228日火曜日

午前中はカンファ室でのラウンドに参加した後伊藤先生とお会いし今回の実習の感想などを述べました。残念ながら訪問者受け入れは伊藤先生がレジデントをされている期間のみであり20056月以降の受け入れは未定であるということでしたので今回見に来ることができたのは幸運でした。

午後はクリニックでチーフレジデントのDr.ロビンスと共にAcute Care Clinic(以下ACC)で患者さんを診せていただきました。ここはERの一歩手前のようなところで予約を持たない患者さんが当日受診される場所で主に風邪の方が大部分を占めているようです。その中でも疲労感を訴える患者さんで過去の記録を調べてみると甲状腺の機能が落ちているのではないか、などという指摘を受けたりしました。また保険をお持ちでない患者さんが発症した糖尿病の治療を受けられずいらだつ場面などにも遭遇しました。米国の患者さんをみますとこのように制度の狭間にあって苦しんでいる方が大勢いらっしゃるようです。ACCでの診療はペースが速くついていけない場面も少しありましたが周囲の人々はみなさんのご理解に助けられました。一方で自分の医療における経験値の乏しさを嘆くことになりました。やはり実際に患者さんを自分で診ることで経験を積まねば医師として使い物にはならないということを実感しました。

1229日水曜日

午前中は伊藤先生に就き産科当直をさせていただきました。一例出産があったのですが僕自身積極的に関わることができず途中から参加した1年目のレジデントに任せてしまい自分は遠巻きで観察することにしたところ、後から伊藤先生に消極的だと指摘されました。実際日本で産科実習を行ったときも学生は遠巻きで見学するのみになってしまうのでどの程度の参加を求められるのか困惑する場面でした。

午後は再びACCにて患者さんを診せていただきましたがスタッフ医師のDr.ユアート指示のもと2,30人程度の患者さんを速いペースで診ていきました。最終日になってやっと診療に慣れてきて大いに楽しむことができました。最後の患者さんは原因不明の患者さんで何か妙な感じがしたところ、Dr.ユアートに最後の患者さんはゲイだったけれど話し方からすぐにわかったか、といわれびっくりしました。自分の英語はまだまだなのかと反省しました。

以上のごとくSIU家庭医学実習の全日程を終えるに当たって日本人レジデントの伊藤先生、そして原田先生のお二方には大変お世話になりました。僕は学生のうちに家庭医学や救急などといった外来の教育を受けてみたいという願望があったのですが今回の訪問を通じて自分の目的を達成することができた気がします。今後も多くの学生、医師がSIUにて貴重な勉強の機会を授かることを願ってやみません。