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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

今回、伊藤先生に米国家庭医療を見学する貴重な機会を頂きました。実際の外来の様子を見学・実習するだけでなく、伊藤先生が今ここでレジデントをしている理由や家庭医療を志す理由、現在の医療制度・医学生の勉強態度等、非常にためになるお話をうかがいました。理想に燃える伊藤先生のお話はぜひ皆さんにもお伝えしたいところですが、完璧にお伝えできないと問題なので、このレポートで主にclinicでの実習についてまとめさせていただきます。

12/8 (AM) FP clinic

clinicの様子は以前の方のレポート通りなので割愛します。
午前中で7人の患者さんを診察していた。初日ということで「見学」という形をとらせていただいた。診察内のベッド(産婦人科や歯科で使いそうなイス兼ベッドのようなもの)に既に患者さんが座っており、そこに医者が入っていく仕組みだ。ドアのポケットにはmedical recordという、いわゆるカルテが用意されていて、そのカルテを軽くチェックしてから入室する。毎回、挨拶と握手を欠かさなかった。そして実際に体を触れる前には必ず手を洗う。今日は「needs med refilled」が主な目的の患者さんが多かった。その薬の補充という定期的な目的プラス、「耳が聞こえにくい」とか、「おなかが痛い」等、その他の心配事を相談するという形が多い。身体の診察より、問診を非常に丁寧に行っていたのが印象的だった。治療計画については、residentが患者さんに方法を提案して、それで患者さんが満足するか確認し、その後residentは一旦、部屋の外に出てattendingに報告する。チェック後再び部屋に戻り、患者さんに説明し、帰すという流れだ。患者さん:薬補充、検診、食欲低下、風邪、不安、腹部痛、検査データフォローアップ、BSコントロール等。

12/8(PM) ACC

 Acute Care Clinicでの実習。予約を取っていない患者さんが次々とやってきていた。ちょうど日本の外来と似た感じ。ACCということで、1人にかける時間は通常より短い。緊急性を見極め、とりあえずの処置を行い、次回の担当Drの予約が入ってるか確認し(入っていない場合は予約を促し)、その際にもう一度診てもらうように説明していた。Pilonaidal cyst(尾骨のあたりに膿によるcystができる)の切開排膿は伊藤先生が行っていた。18歳の重症貧血の36週妊婦さんはまだ精神的に未熟で、入院を勧めても「仕事が首になる」と泣き出し、説得するのが大変そうだった。そこはさすが伊藤先生、丁寧に入院が必要な理由を説明し、最後には患者さんも納得していた。午後は何人かのH&Pをとらせていただいた。学生が実習といっても患者さんもそれを理解していて、すんなり始めることができた。アフリカ系の患者さんは話し方がラップに乗っているようで、聞き取りにくかった。患者さん:CHF、腰痛、蕁麻疹、悪寒、TMJ disorder、接触性皮膚炎、貧血等。

12/9(AM) FP clinic

 アジア系の中年女性の患者さん(結局痔だった)はなまりが強く、H&Pがしにくかった。「ワーム、ワーム」と繰り返していて、この人は何を言ってるんだろう、、、と困ったが、よくよく聞いてみるとどうやら寄生虫がいると思い込んでいたらしい。出産後の患者さんには生理が始まったらまた妊娠する可能性が高いことを伝え、避妊について話し合っていた。患者さん:妊婦、産後、甲状腺切除後、頚部腫脹、TIA f/u、痔等。

12/9(PM) CCHC

 初診の妊婦さんには1時間くらいかけて丁寧に問診・一般的な身体診察、pelvic exam、最後に看護婦さんが採血をする(採血はresidentの仕事ではない)。日本の産婦人科実習では普通の検診を診たことがないので比べられないが、ここまでしっかりチェックしてもらえば安心だろうと思った。再診の患者さんは吐き気がないか等の決まりの質問と子宮底長測定、心音を聞いて終わりだ。速ければ10分で終わる。この日は患者さんも多く、最後のほうはダッシュでおこなっていた。

12/10(AM) FP clinic

 たまたま妊婦さんや赤ちゃんが多く、患者さん数は少なかった。この日のresident3年間の期間をそろそろ終えるため、担当の患者さんが徐々に散らばっているからだという。2ヶ月検診が2例続いた。日本の開業医では考えられないことである。患者さん:妊婦、検診、UTI等。

12/10(PM) Conference

 タイトルはHow to start clinic from scratch3年間のレジデントを終えると開業する先生も多いらしく、このようなビジネスのレクチャーも行われる。私は経営については興味はわかないが、開業を考えている先生にとっては貴重な講義なのであろう。

12/11(AM) FP clinic

 足白癬、湿疹、先天性斜頚等。

12/11(PM) FP clinic

 この日の女医さんは、お化粧もばっちりで、爪のお手入れも完璧だった。医者らしくない雰囲気でもう二十歳くらいの娘さんが2人いるシングルマザーである。プライベートなお話もさせていただき、結構仲良くしていただいた。日光角化症の液体窒素の治療もFPの範囲である。DMfoot careも行っていた。アメリカの女性の99%はピルを飲んでいるらしい。日本とは全く違う。。。患者さん:日光角化症、火傷、打撲、産後、ADHD疑い、DM、中耳炎、咽頭炎、ヘルニア等。

12/12(AM) FP clinic

 FPでは患者さんの教育も重要である。DM3大合併症と言ったら網膜症・腎症・ニューロパチ−だが、それらでは死なない。死ぬのは心筋梗塞等である。禁煙指導もpreventive medicineの範囲である。「やめたいけどやめられない」と涙ぐむ患者さんに、先生はニコチンパッチについて説明し、最後には納得して帰っていった。さすが!患者さん:DMHTN、睡眠障害、慢性気管支炎、膀胱瘤、妊婦。

12/12(PM) ACC /home visit

 とにかく風邪(URI: upper respiratory infection)が多かった。それに伴う滲出性中耳炎も多い。患者さん:偏頭痛、迷路炎、風邪、耳痛、頚部痛、ニキビ、肩痛、咽頭痛等。
4:00からはhome visitに連れていっていただいた。TVの肥満大賞にでもでるようなものすごいobesityの患者さんである。MRSAが検出されている為、ディスポをつけての往診。自分ではもう何もできなく、寝返りを打つのも一苦労。尿カテも、腹部の肉を持ち上げないと、どこにいれていいかわからないくらいだ。何か腹部にmassがあるのだが、きっとMRIの中にはいらないのだろうか、今すぐ検査というわけではなさそうだった。

12/15(AM) FPTS

 今週の午前はFP clinicからmemorialまたは St John’sに入院になった患者さんのhospital round conferenceに参加した。Conferenceではeducationといって、毎日誰かが、自分が興味を持った疾患について勉強し、発表するという機会がある。クローン病や糖尿病の診断の復習、疲労骨折等だった。そこでも最新のトピックについてdiscussionされていた。伊藤先生もおっしゃっていたように、常に最新の話題、EBMup to dateしていることは、患者さんを生かすか殺すかに差が出てくるので、非常に重要である。途中でhypoglycemiaの鑑別についてのdiscussionもあった。Residentattendingも上下の関係なくdiscussionが行われていたのはいいことだと思った。日本では上の先生が下にも意見を求めるなんてめったに見ない光景である。一緒に仕事をしていこうという雰囲気があった。

12/15(PM) FP clinic

 患者さん:産後、新生児カンジダ、腹部痛、交通事故後頚部痛、定期pap smear、下痢等。

12/16(AM) FPTS

 今日は、1年目のresidentconference前のhospital roundにつかせてもらった。7:009:00の間に6人の患者さんをまわるペース。Dischargeが加わると予定しているより長くかかってしまうらしい。クマリン中毒、肝不全、低血糖など。

12/16 (PM) FP clinic

 患者さん:臍帯ヘルニア、検診、腸炎、結膜炎等。

12/17(AM) FPTS

 同様。

12/17(PM) FP clinic

 患者さん:肝硬変、疼痛コントロール、頭痛、咽頭炎、乾癬、RAred eye等。

12/18(AM) FPTS

 同様。

12/18(PM) OB

 今日はOBということだったが、出産には立ち会えなかった。しかし、on callresidentにつかせていただいたので、心筋梗塞のadmission等をみることができた。ERに運ばれてきて、FP residentが診て、attendingに報告し、場合によっては専門科にコンサルトするので、pagerと電話がなくてはなりたたない。色々な科が関わるので、その連絡がやや面倒くさそうである。多くのadmissionがあればなおさら忙しい。

12/19(AM) FPTS

 同様。

12/19(PM) FP clinic

 患者さん:妊婦、中耳炎、痙攣、偏頭痛等。

最後に、今回、貴重な機会を与えてくださった伊藤先生はじめ、SIUの方々、どうもありがとうございました。