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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

はじめに

私は816,17日というわずか2日間でしたが、SIUFamily Practiceで見学実習をさせていただきました。このレポートは実習をして感じたことおよび伊藤先生にお聞きした話を基に作成しました

1日目 午前 Clinic, Dr. Thomas

1日目の午前はDr. Thomasというattendingの先生についてClinicと呼ばれる外来を見学させて頂きました。見学した患者さんはHyperactivityと呼ばれるADHD2名、neck pain, low vision caused by diabetesなどでした。こちらでは「ちょっと元気がよすぎる」程度の子供にもADHDの診断がつけられてしまうということもあるようです。

完全な個室:外来の部屋は完全な個室で、ドアはひとつ、中待合もないため、音が外に漏れる事も待っている人に声を聞かれることもなく、Privacyが完全に守られる環境になっていました。また、先に患者さんが部屋に入っていて医師が後から入っていくという形をとっていました

病院の雰囲気:非常に明るい印象を受けました。壁にはアニメのキャラクターが張ってあり、看護士さんは柄の入った白衣(?)で、医師も白衣を着用しない人もいました。伊藤先生もネクタイはしておられましたが、白衣は着用していませんでした。アメリカでも白衣の有無は医師としての信頼感と取るか患者の緊張感を助長するだけかというcontroversialはあるようですが、あのような明るい雰囲気は受診のしやすさ、医師看護士への相談のしやすさを助けていると感じました。

面接の基本:少しでも患者を待たせると、必ず「遅くなってすみません」と言い、全ての患者に自己紹介、学生の紹介を欠かしていませんでした。カルテ書きに一生懸命になることなく患者さんの目を見て丁寧に話を聞く様子が印象的でした

1日目 午後 Acute care clinic, Dr. Ito

午後は伊藤先生についてAcute care clinic (ACC)という、Family practiceの中の救急外来のようなところを見学させていただきました。

Emergency department(ED) vs ACCACCは日本で言うところの1次、2次の患者さんを診る救急外来でした。救急科(ED)はもっと重症、主に3次の患者さんを中心に診ているそうです。こちらでは洗練されたTriage nurseがいて、common coldのような症状でEDを受診した場合、何時間も待たされるということが起きるそうです。そのため、何度か受診した事のある人は自分の症状の軽い重いに応じてEDACCを使い分けているそうです。EDspecialistは重症の患者さんばかりを診るという事になり、効率がよいようにも思えますが、自分が重症か軽症かわからないから受診するのが救急なのだからACCEDを自分で使い分けるというのも少し酷なのではないかという疑問も持ちました

医師とタバコ:アメリカではタバコを吸う医師はほとんどいないらしい。タバコを吸うなという医師が吸っていたら説得力がないというもっともな議論だ。ただ、アメリカのもう1つの大きな問題点である、obesityに関してはover weightな医師が”lose your weight”adviceすることは頻繁にあるように思われる。

訴訟社会:訴訟社会の光と取るか影ととるか、アメリカではinformed consentが徹底されている。膿の切開排膿1つでもそのrisk, side effectを説明し、記録に残している

EBM:伊藤先生が最近最も関心を寄せている分野の1つのようで、非常に厳格に実行されていた。general fatigueの患者さんに対してorderした検査はanemiascreeningのためのHbliver function testとしてAST, ALTthyroid functionとしてTSH4項目のみであった

resident教育13年目の医師はresidentと呼ばれ診察が終わるごとにattendingと呼ばれる4年目以降の医師にcase presentationを行なったり、判断の難しい症例では一緒にdiscussionしたりする。

仕事と余暇:「働くときは働き、休むときは休む」という姿勢が徹底されており、大半の仕事は5時には終わり、6時頃には病院から人はいなくなってしまう。この日はACCに患者さんが多く、夕飯休憩を挟んで仕事を見学させてもらいましたが、伊藤先生は帰りたかったら「いつでも帰っていいよ」、と何度も声をかけてくださいました。というのは、学生をあまり遅くまで残らせると他の医師から怒られるという、ことさえあるからだそうです。それでも、9時には終了し伊藤先生にホテルまで送っていただきました。伊藤先生はこのようなゆとりのあるカリキュラムというのも重要だと言います。こういう時間を使って最新の文献を読むことで、少なくとも知識の上ではAttendingdiscussionできるようになったり、最良の治療は何かを常に追いかける事が出来るようになったりすると。アジアの学生が欧米の学生に比べて圧倒的に勝るのはその勤勉さだと思います。アメリカに来て日本にいるときと同じように働けば必ずやone of the most industrialな人になれると思います。言葉や文化などハンディキャップはいろいろありますが勤勉さを前面に出せばアメリカ社会でも渡り合える可能性があるのではないかと感じました

2日目 午前午後 Clinic

2日目はカフェテリアでの昼食をはさんで午前、午後ともに外来を見学させていただきました

Refill制度refill制度というものがあって、日本では禁じられている無診療処方がみとめられている。前回と同じ薬をもらうだけの慢性の患者さんは医師の診察無しで電話だけで薬を注文する事が出来る。これは、効率的である一方、特にアメリカではdrug seekerが多く注意しないと薬を出しすぎてしまう事にもつながる。

画像を自分で見ないCT, 病理所見はもちろん、エコー画像やchest X rayでさえ、自分で画像を見ることなくradiologistreportを読むだけになっている。専門分化が進んだアメリカではradiologistの質が高くレポートも充実していて、訴訟社会のためradiologist以外が読影して見落としがあるとすぐに問題となってしまうとのこと。しかし、臨床情報を最もよく知った主治医が写真を見ることによって読影の専門家では発見できないものを発見する事もあるのではないかと思いました。

Family practice:過去の実習レポートにもあるとおりFamily practiceの守備範囲は本当に広い。common colddiabetesから交通事故のfollow upSTD、新生児検診と、わずか2日でも多岐に渡りました。僕が驚いたのはその広い範囲の症例をトリアージするのではなく、自分で少なくとも診察のレベルまでは行う、ということでした。STD疑いには膣鏡の所見を取り、内診をする、stroke疑いでも発作後48時間近く経過して治療適応がないと判断すると、入院はさせるがすぐにはneurologistconsultしない。専門家には本当に専門家が必要なときにしかconsultしないという姿勢が徹底されていました。背景には、専門分化が進んだアメリカでは専門家にconsultするとそれだけ、お金もかかるということもあるそうだ。強固なFamily practiceの専門家がいることから、各臓器のspecialist教育は充実する、というシステムが根付いている。Family practiceになるためにはもちろんのこと、各臓器のspecialistを目指すにも素晴らしいシステムだと思った。

最後に

わずか2日間でしたが、アメリカの医療、Family Practiceというものの雰囲気を感じる事が出来ました。臨床実習の経験もなく、診療室でのマナーもわきまえておらず、大変ご迷惑をおかけして本当に申し訳ございませんでした。今後もたくさん勉強してよい医者になれるよう努力したいと思います。お世話になった伊藤先生を始めFamily Practiceのスタッフの方、見学を許可していただいた患者様、本当にありがとうございました。