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Home>アメリカ・米国家庭医研修に挑戦>臨床留学学生編>イリノイ大学家庭医療学実習第3回

家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

みなさん、こん**は。伊藤@イリノイ大学です。

現在日本へ向かう飛行機の中です。先週、8週間におよぶfamily practiceの実習を終了し、帰路についております。国家試験まで残りわずかということで実習をしながらの国試勉強は想像以上に大変でした。その為毎週実習報告を書きたかったのですが、実現することができませんでした。楽しみにしていた方、申し訳ありませんでした。この帰りの飛行機の時間を利用し、実習について簡単にまとめてみたいと思います。

この8週間で内科2週間、小児科2週間、産婦人科2週間、外来クリニック2週間、実習しました。前回の実習報告でもお話したようにイリノイ大学ピオリア校family practiceは自分たち専用の病院を持っています。レジデントはこの病院を中心として各科をローテーションしながら学んでいきます。その為に僕も非常にバリエーションの富んだ実習をすることができました。

最後の2週間は総合内科をまわりました。チーム構成は指導教官1名、シニアレジデント1名(3年目)、1stレジデント2名と僕の合計5名です。今回僕はサブインターンとして参加しましたので常時3〜4名ほどの患者を持たしてもらいました。シニアレジデントの監督の下、入院のオーダーを考えるところから入院中の管理、退院する為のオーダーまで一通り全ての事を考え、シニアレジデントに相談します。そして、OKが出れば自分の思った治療を患者に行なうことができるのです。(これが日本と実習とは大きく違うところですし、とても責任を感じます。)こちらの入院日数の平均が非常に少ない為、2週間いるだけでもかなりの数の患者さんに出くわすことができます。おそらく10名くらい受け持ったと思います。(BSTでは2週間で1〜2名程度でした)その内、1名はICUで亡くなりました。(ICU患者を3名ほど受け持ちました)

今回一緒だったシニアレジデント(3年目の女医)の印象が今まで僕のイメージしていたfamily practice(以下FPとします。)とは少し違った印象を受けたのでそれについて少し述べてみたいと思います。どちらかというと、僕はFPに対して外来の専門医的なイメージをもっていました。しかし、彼女はinpatient(入院患者)も好きだというのです。(特にICUなど重症な患者のケア) 彼女と一緒に1日で退院できた軽症の患者からICU入院が必要な患者まで治療して行きました。彼女の患者の一人が分娩のため産科に入院してきたので、赤ん坊を取り上げに産科へ行ってしまったとき、「ICUの患者を持ちつつも、赤ん坊も取り上げるのか」と感心してしまいました。(最初から最後まで分娩の管理も自分の責任で行なっています。) その一方で週に4半日程くクリニックで自分の患者をみます。2週間を彼女と共に過ごして感じたことは実に幅広い範囲をカバーしているということです。彼女はoutpatientだけでなく、inpatient、それも小児科、産科、内科、ICUに至るまで病院中を駆けずり回っていました。このように聞くと本当に彼女がすべての分野において十分良質な医療が提供できているのだろうか、と疑問に思う人がいるでしょう。しかし、この点に関してアメリカのシステムは実にうまく機能していると思います。病院内では各専門医に容易にコンサルトできるためです。ICUの患者は病状に応じて呼吸器か循環器の専門医にコンサルトして治療していきますし、産科で問題が起こった場合(たとえば、緊急の帝王切開)でも産婦人科専門医の助けを借りて自分で行なうことが比較的容易にできるからです。

今回の実習の目的の一つにアメリカのFPはいったいどこまで自分ですることができ、どこから先は専門医に任せるのか、そのラインを見極めたいということがありました。この点に関して、彼女と一緒に働けたことは非常に参考になりました。一見FPは何でもみれる医者だと思われがちですが、そうではなくそれを十分サポートできるシステムがある、ということを知りました。研修システムもそのようなFPドクターが育つようにうまく組まれていると思いました。

今回2日間ほどAAFP(アメリカ家庭医学会)から優秀なFPとして表彰されたドクター(秘書さんはこのあたりでもっとも優秀なドクターです、と言っていました)と一緒に外来クリニックをする機会を与えてもらいました。医学的知識のすごさもさることながら、患者の訴えに非常に丁寧に耳を傾けていました。また、朝から夕方まで昼食の15分を除き、常に働きつづけていたことも印象的でした。そのパワーに付いていくだけでも大変でした。どの道でも「すごい」といわれる人は一生懸命働いているようです。

5年生の夏、僕は2ヶ月間開業しているFPの後をついてまわり、FPのイメージをなんとなく、赤ん坊の検診から産婦人科的疾患も含め、老人まですべてを扱っている外来の専門医だ、と思っていました。 今回の実習では自分の患者が外来の時だけでなく、入院が必要な時でさえも最終的に自分の責任において治療していくという「患者の専門医」であり、生まれたときから死ぬまでとはいかないまでも、かなり長い期間において患者の健康に関するありとあらゆる場面(外来、入院、女性であるならば妊娠や赤ん坊のケアも含めて)で必要とされるドクターといった印象を新たに持ちました。

これから先、今度はドクターとしてFPの道を進んでいこうと思っています。また新たな発見などがありましたら何かの機会にお伝えしたいと思いますし、日本でもっとFPを広めていく為の努力もしていきたいと思っています。この実習報告を通じてアメリカのFPについて、また、これから日本で必要とされていくだろうFPついて参考にしていただきたいと思います。