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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

7/9-13

今週から病棟実習が始まりました。こちらでは内科の病棟をチームでまわっています。指導教官1人、シニアレジデント1人、インターン(レジデント1年目)2人、学生3人、合計7人のメンバーです。このチームが全部で4チームあります。そして、4日に1度当直を担当していきます。教授回診のような大名行列はありません。

さて、1週間しか経っていませんが、日本で受けてきたBSTと違うところをたくさん発見しています。今回はその中でも特に目立った2点について報告したいと思います。

 

議論好き

こちらでは毎日の回診で患者さんのプレゼンテーションを病室の前で行ないます。その後、患者さんに対する様々議論が展開されます。長いときは20分くらい一人の患者さんについて話し合っています。話すだけならば日本でもよくありますが、強調したいことは指導教官もレジデントも学生もみんなで議論に参加しています。指導教官がすかさず学生に対して意見を求めてきます、しかも、名前を指定してきます。学生は自分の思っていることを間違いを恐れず、なんでも言います。日本のように黙っていると次の人へ、ということはありません。その意見をもとに、また新たな議論が展開されていきます。そして、その中で少しでもわからないこと、疑問に思ったこと、など誰でもすぐにみんなに質問します。答えがわからなかったみんなで考えます。

また、レジデントとインターンで治療方針を話し合うときなども、レジデントの言うことそのまま、受け入れて、はい分かりました、ということはありません。インターンは少しでも疑問に思うこと、自分の治療方針は違うと思ったらお互いが納得するまで話し合います。

すべての議論はどこかの論文をもとに必ず話し合っています。どこどこにこういった論文があったから自分はこう思っているのだけれど、と指導教官はいつも言います。レジデントもインターンもどこかの論文を根拠に議論し合います。当たり前のように思うかもしれませんが、僕が受けてきたBSTでは、多くの研修医や3,4年目の先生がどうして自分がこの治療をしているのか、根拠に基づいた考え(いわゆる、EBMですが、)を堂々と講師や教授、助教授と議論している場面を見たことがほとんどないからです。大抵、上の先生がいったことに反論することなく、はい、分かりました、といって終ってしまうことがほとんどだったと記憶しています。

このような意味で同じチームのメンバーが同じレベルで議論し合っている環境はとても刺激的でした。ただ、残念なのは、その議論にほんの少ししか参加できなかったことです。みんなの話しを理解するのに精一杯で、すかさず自分の意見を言い出す暇をなかなか見つけることができずに1週間が終ってしまいました。こういった議論に参加しながら過ごす実習は暇な時間をなかなか与えてくれませんが、とってもやりがいがあるし、身になる実習だと思いました。

 

患者さんに対してとても礼儀正しい

患者さんに対する礼儀正しさも驚かされました。指導教官から学生に至るまでものの見事に教育されています。具体的に例を出した方が分かりやすいと思います。たとえば、指導教官と一緒に数人の学生が自分の担当でない患者さんの心音を聴診するとき、こんな会話が展開されます。

指導教官「私は指導教官の・・です。私たちの病院は教育病院になっています。もし、差し支えなければ、これから数人の学生に心臓の音を聞かしてあげたいのだけれど、協力してくださいますか。もし、いやならば、遠慮なく言ってください。」最初に指導教官一人で病室に入ります。もし、患者さんの許可が下りれば、学生が入っていきます。また、チームでまわるときも初めて会う患者さんには指導教官が必ず全員を紹介していきます。チーム紹介を怠ることはありえません。

次に学生が聴診するときですが、

学生「私は学生の・・です。これからあなたの心臓の音を聞かせてください。もし、不愉快なことがあれば何でもいってください。すぐに止めます。」

患者「どうぞ」

学生「あなたの心音は・・のように聞こえます。これは正常の音です。心配ありません。」

このように必ず、ひとつひとつの動作に説明を加えていきます。その結果が何を意味するのか、詳しく説明していきます。これも日本ではほとんど見かけない光景です。足の浮腫を見つけたら、それがどういった病気によって引き起こされているのか、どの程度のものなのか、などかなり詳しく説明します。

診察が終ると、

学生「ありがとうございました。あなたのご協力に感謝します。」

患者「どういたしまして」

1人の学生がこのように言うことはあるかもしれませんが、すべての学生がこのように1回、1回患者さんに接していくことに驚きを覚えました。

また、担当の患者さんを診察し、戻るとき、レジデントもインターンも学生も必ず、何か困ったことはありませんか、私に他にできることはありませんか、遠慮なくなんでもおっしゃってください、といいます。日本のように他に何か質問はありませんか、というのと一味違い、新鮮な思いを抱きました。また、こういった非常に丁寧な対応がすべてのドクターや学生に対して共通して見られることもすばらしいと思いました。