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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

先月はCardiology、循環器科のローテーションだった。これは2年目レジデントで必修とされている科であり、米国でもっともメジャーな内科に当たる。SIUCardiologyのプログラムを持っていない。代わりにPrairie Cardiology Consultantという大きな開業医グループが教育、研究の役割を担っている。このグループは噂によると、全米でも10位以内に入るほど研究や臨床が盛んらしく、周りからもかなり高い評価を得ている。日本では想像できないかもしれないが、40人程のCardiologistたちがここに所属し、スプリングフィールド一帯の患者を受け持っている。そのオフィスは病院の一角にあり、心臓カテーテール室や病室までほんの数分で移動できるように内部ですべてつながっている。

僕はここで1ヶ月を過ごしたわけだが、幸運なことにこのグループでもっとも古いCardiologystの1人,Dr.Mosesについて学ぶことができた。彼は数年前に我がプログラムからベストTeacher賞を受賞されたほどとても教育熱心なことで知られる人だ。その噂どおり、毎日欠かさず、僕1人のために30分くらい時間をとって講義をしてくれた。その講義内容はお昼によくあるカンファレンスのような内容でそれを1人のために毎日のように行ってくれるドクターには今まで出会ったことがなかった。

午前中は病棟の患者の回診、心臓カテ、午後はクリニックで外来患者を診察、それに加えてテーマ別のミニレクチャーやボード試験用の問題のレビューなどとても充実した日々を過ごすことができた。

優秀で教育熱心な専門医ほど僕らプライマリ・ケア医に対して、ここまでは自分たちで見てほしい、ここから先は専門医に送ってほしいということを明確にして教えてくれる。特に、プライマリ・ケア医によくありがちな、ちょっと不安のある症例や自信のない症例などのマネージメントについて教えてくれる。彼らの立場は明確でコンサルタントの必要のない患者を送ってこないでほしいというものだ。日本のすべての専門医ももう少しこういう立場で学生や研修医を指導してくれると学ぶ側は理解しやすいと常々思う。

外来クリニックでは3つの興味あるクリニックを体験した。Device clinice, Lipid clinic,CHF clinicである。Device clinicとは心臓ペースメーカーをつけている患者を対象としたクリニックで、3つの異なる業者の担当者が様々なテストを繰り返してペースメーカーが正常に稼動しているかどうかを確認していくのだ。複雑な電子工学技術が見事に医学に反映されていることを目の辺りにした瞬間であった。Lipid clinicとは高脂血症の患者を対象とした様々な方向からアプローチしていくクリニックである。ドクター、ナース、薬剤師、栄養士、カウンセラーから成り立っている。それぞれの立場から患者はアドバイスを受けて病気の総合的な理解に努める。高脂血症はその合併症が問題であるのでそれをいかに予防していくかが大きなポイントとなるが、患者は全くといってよいほど症状がないのでこのような包括的なマネージメントスタイルが必要になってくるのだろう。CHF clinicとはうっ血性心不全の患者を対象としたクリニックで、ドクター、ナース、薬剤師、栄養士、カウンセラー、呼吸療法士から成り立っている。CHFで入院してくる患者の半数以上は普段のライフスタイルをちょっとはずしてしまった、薬を飲み忘れたり、水分コントロールを誤ったりなど、の患者が多いためLipid clinicと同様、各専門家による包括的な指導が必要になってくるということであった。

このように多くの他職種が協力して外来の場で一人の患者へアプローチしていける環境があることはすばらしいことである。しかし、医療費が高騰していく中でこれだけのメンバーを揃えていくことは並大抵のことではないらしいということだった。日本でもこのようなクリニックを実現できるよう医療制度の改善を強く望む。