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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

8月に入り、いよいよ研修が本格的にスタートし、忙しい日々を過ごしています。さて、この間の月曜日、火曜日とPALS(pediatric advanced life support)を受講してきましたのでその様子をお伝えします。

PALSもACLSと同様にAmerican Heart AssociationとAmerican Academy of Pedicatricsから出版されている500ページにわたる本を渡されました。大まかな点はACLSと似ていましたが、具体的な投与量などは細かく違ってきます。大人と子供の違いを理解し、それに合わせてALSを行っていくことが大切になっていくわけです。PALSはSIUのfamily practiceでは今年から1年目レジデント全員に義務付けられました。講習会中は所属しているローテーションの仕事は完全に免除されて講習会に専念できます。他にこのプログラムではCPR,ACLS,ALSO(advanced life support of obstetrics),NALS(neonatal advanced life support)が義務付けられています。それにATLS(advanced traumatic life support)があるわけですが、これは選択で受講でき、受講した場合は2日間研修休みとしてカウントされます。(研修休みは年に1週間与えられていて休暇とは別にカウントされます。休暇は年に3週間です。)僕はATLSも受講する予定でいます。

スケジュール

2日間のコースで両日ともに8:00−16:30でした。テーマは1-Rapid Cardiopulmonary Assssment:Indentification and Treatment of Shock and Respiratory failure,2-Bag-Mask Ventilation and Advanced Airway,3-Arrhythmia Recognition and Management,Cardioversion,and Defibrillation 4-BLS station & AED,5-Vascular Access,6-Algorithms and Respiratory Failure/Shock,7-Case Scenario:Shock,Respiratory Failure Rhythm,8-Sedation,9-Coping with Death,10-trauma and Spinal Immobilization,11-Childre with Special Healthcare Needs。これらの各テーマに4人ごとに分かれて45分ほどの講義と実習をした後、最後に実技試験、筆記試験がありました。

参加メンバー&インストラクター

family practice resident 4名、pediatric resident 4名、ICU nurse 8名、計16名程だったと思います。インストラクターはナース、パラメディックの教育部門の方たちでACLS同様豊富な経験を元に各講義で臨場感いっぱいに話してくださいました。ここでもドクターのインストラクターは1人もいませんでした。最初にイントロダクションで30分ほど話してもらっただけで終わってしまいました。

ACLSと比較して

小児は0歳から18歳まで扱うわけで体格によってはほとんど大人と同じ扱いをする場合もあり、その違いをしっかり理解することが大切でした。特に新生児や1歳未満の場合、薬の投与量、ショックを与える量は十分に注意しなければいけません。小児でCardiac arrestになった場合、大人と違いそれは悪くなった最終段階に近く、いかにrespiratory distress,respiratory arrestの状態で食い止めるか、ということが大切になってきます。大人はCardiac arrestが最初に起こる場合が多々あるのでAEDの必要性が増してくるわけですが、小児では場合によりけりです。intubationする場合には選ぶtubeの大きさをいかに的確にすばやく選択することが大切になります。BLSでは1人の場合、まずは1分間CPRを行ってから助けを呼ぶことが必要です。Call is first or fast ? という表現を使用していました。IVアクセスは小児ではうまく取ることが大人以上に難しいようです。ですから、IOアクセスを選択することがあります。IOが何の略か分かりますか。intraosseous,つまり、骨に針を突き刺して輸液や薬を投与します。小児ではIVと同じ時間と効果が証明されているそうです。しかも、30秒もあれば、アクセス可能です。小児では大人ではあまり必要ないprocedureでもsedationが必要になることが多いわけですが、その講義もありました。どの薬をどの場合に選択すればよいか、まあ麻酔科の講義と同じ内容でしたが、かなりよくまとまっていたと思います。ACLSになかった講義としてCoping with Death がありました。大人以上に小児が亡くなった場合それをどのように両親や親族に伝えるか、実際に子供をなくした遺族の意見が収録されたビデオをみて問題提起し、議論しあい、最後はロールプレイをしました。これが僕にとっては非常にためになりました。子供を亡くした両親の動揺は非常に大きなものがありどのように言葉をかけてあげればよいのか、指導されました。大切なことは子供の名前を述べること、diedという言葉をきちんと使って説明することだそうです。Traumの講義もACLSにはありませんでしたが、PALSではかなりしっかりと教えてもらいました。どのようにspinalを固定し、気道を確保すればよいのか、横たわっている小児でspinal injuryが疑われるのを見かけた人が場合、まず、何をするか。2人いたら1人は助けを呼びに行く、ではありません。2人で小児をspinal immobilizationにしながら仰向けにさせます。その後、1人は助けを呼びに、もう1人は気道を確保、CPRを行うという手順です。

と言う感じでやはりACLS同様、PALSとして2日間用意されているコースでそれなりのボリュームはありました。小児は決して大人と一緒に扱ってはいけない、と実感させられた2日間でした。個人的には1日目終了後、当直があり、ほとんど寝ずの状態で参加した2日目でしたが、実技も筆記も追試することなく終えることができよかったなあ、と思います。ACLSは実技で追試に引っかかってしまいましたので。 21日はNALSを受講する予定です。今度は新生児の心肺蘇生について半日だけですけれども集中的に学んできます。

伊藤彰洋
8/10/02