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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

11月はレジデント研修の中でもっとも特別な選択研修であった。米国の多くの家庭医療学レジデントプログラムは選択実習として1ヶ月間その施設を離れて研修できる制度がある。その制度を利用して1ヶ月間日本の医療システムを学ぶことを目的として帰国した。

1ヶ月間という長期間にわたって帰国するのは研修を開始してからは初めてのことであり、今回の帰国は1年ぶりであった。

訪れたクリニック・病院は家庭医療、訪問診療に力を入れているところであり、日本において将来の家庭医像を探るのにとても参考になった。その一方で日本での家庭医の必要性をより理解することができた。

ここで家庭医について少し話をしておきたい。残念ながら世界中を見渡しても家庭医の定義にはばらつきがあり、何を持って家庭医というかは難しい。こういう事情もあり、日本で家庭医とは何かと言われると一様にこれだとは言い切れないところがある。しかし、先進国諸国の中で家庭医制度を持っていないのは日本だけだと言われる。この家庭医の意味するところは内科、小児科、産婦人科、精神科、外科のプライマリ・ケア領域を見ている医師ということであるようだ。この意味での家庭医として日本で働いている医師はごく少数ということになる。では、どうして今家庭医が必要だといわれるのか。それは学問的に分かっていることなのだが優秀な家庭医がいるとよりその地域が健康に保たれるということだ。つまり、本当に専門医が必要な患者を専門医へ正確に紹介できること、専門医が必要でない患者を正確に診察、治療できることが家庭医の仕事なのだ。それが地域を健康に保つために必要不可欠なのだ。専門医は概して特異度が高く、リスクの大きい検査、治療をする傾向にある。患者をそういったリスクから守ることも大切な家庭医の役目といえる。

日本には昔からかかりつけ医と言われる医師がいる。いわゆる地域で開業している医師たちであるが、そういった医師たちが家庭医として地域を支えてきたことは確かである。問題なのはきちんとしたトレーニングを受けずにきてしまっていることだろう。しかし、この問題は実は日本の医療制度、医学教育そのものからきていると考えられる。日本の医学部教育からはじまり、卒後の研修医教育制度、専門医志向が強くプライマリ・ケア教育が専門医教育に比べて軽んじられてきた背景がある。このような制度が長く続いたおかげで日本では家庭医の重要性が認識されないできた。しかし、このような不合理がそう長く続くわけがない。ここ近年急速に家庭医に対する関心が医師の間からも患者の間からも増えてきている。これは言ってみれば時代の流れとして当然なのだ。

今回の日本での研修を通じてこの動きを確かなものとして感じた。特に日本家庭医療学会総会に出席し、多くの志を共にする医師、学生と出会うことができた。そして、米国で家庭医療学を研修できるチャンスを与えられた者の責任の一端を知ることができた。そういった意味ではこの日本研修は将来のビジョンをより確かなものにすると共に、これからの具体的な課題を発見できることができた貴重な1ヶ月間であった。