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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

5/26/03

今月はICUローテーションである。ICU、それは文字通り、すべての患者はIntensiveな治療を必要としている状態であり、治療する側としてももっともストレスを感じる、これは良い意味でも悪い意味でも、場所であろう。一年間の研修医生活が終ろうとしているが、これまで死亡する患者を見たのは1名だけだった。それが、今月だけで最低10名は体験したであろう。毎日のように誰かがなくなっていった。これだけ人間の死を目の当たりにした経験は今までになかった。

今月自分で受け持った患者は3週間で15名ほどだった。その内の半分はOD,overdose、自殺目的で薬を過剰服用した患者であった。米国の一般的なICUの患者はODと人工呼吸管理を必要とする患者が大半を占めると推測できる。ICUでも毎日昼のレクチャーが用意されているが、その多くは人工呼吸器とその合併症、鎮静剤の使い方に費やされた。指導教官はPulmonary Critical careを担当する専門医たちだ。それに、Cardiologist, Neurologist, Infectious Disease, Psychiatrist, 倫理委員会などが絡んでくる。渡される論文も人工呼吸管理や敗血症の論文が多かった。

レジデントの使命は一日でも早く患者の体調、バイタルサインを安定させ、ICUから一般病棟などへトランスファーさせることにある。または、瀕死の患者、患者の家族に対して病状説明、心肺蘇生が必要なときにどこまで施すか、それともDNRdo not resuscitate心肺蘇生をしないか、を前もって話し、万が一の事態に備えておくことだ。

そして、コード(心肺蘇生が必要な場合、ACLSCPRなど)が必要になった患者の治療の責任を持つ。これが個人的にはもっともストレスであった。平均コードは1回/日であろうか。そのたびに全力で病室へ走りつけ、ACLSを開始する。こんなにACLSを体験する機会はもう二度とないだろうというくらいに体験した。残念ながら半数以上の患者は蘇生できずに亡くなっていった。CPRを必死に繰り返し、電気ショック、エピネフリン、アトロピンを繰り返してもACLSの講習のように患者は簡単に戻っていかない現実を目の辺りにした。

ODの患者は自殺未遂でICUへ入院する。彼らの動機をいろいろと探るとこちらが悲しくなってくるくらい辛い思いをし、生きる希望を失い、自殺を試みた、という結果に至る。しかし、幸いにして今月はすべてのODの患者は命を取り留めることができた。人生の目標を見失ってしまうこと、生きることに対する答えを見出せずに辛い日々を過ごしている人たちの最後はこうなってしまうのか、と大変考えさせられる経験をした。