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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

5月はNICU,Neonatal Intensive Care Unit,新生児集中治療室とNewborn/Nursery新生児室のローテーションであった。最初の2週間をNICUで、後半の1週間はNewborn、最後の1週間は休暇をとった。全くの余談だが、7月から新しい学年が始まるため56月は1年間で余った休暇分を使い切らなければ、という思いにみんな駆られるのでいわゆる休暇のシーズンという裏事情がある。

NICUでは常時30-40人の新生児の患者(ほとんどが未熟児であるが)でいつもあふれていた。今まで80件のお産を自分で手がけてきたが、ほとんどの出産は健康な新生児であったため、未熟児を見る機会はないに等しかった。超未熟児、体重500グラムから2500グラムまでくらいの未熟児をケアしている。第1週で学んだことは新生児、未熟児ほどケアをなされるままに受け入れる患者はいないということだった。どのような検査や治療を行おうとも新生児はただされるだけの無抵抗なのである。ただ、泣くだけだ。それだけにケアする側も仔細な変化を感じ取っていかなければならないことを学んだ。

レジデント2人とナースプラクティショナー2人、指導教官2人で40人前後の未熟児を毎日見ていく。僕は常時3−5人ほど受け持ったが、小児、成人と大きく違う点は一人の入院期間が非常に長いということだ。平均1ヶ月から2ヶ月くらいはいるのではないだろうか。まあ、ICUとついているのだから当然かもしれないが、成人のICU患者と比べても非常に状態が落ち着いている患者がたくさんいる。家で発育できるのに耐えうるだけの体重と栄養が達成されるまでNICUでケアを続けなければいけないである。

新生児、未熟児では人間の生命活動の原点を学ぶことが多いことも特徴だろう。胎児から分娩を経て新生児となり、外界に出た瞬間から独自の呼吸機能と循環機能を対応させるべく、体が反応する。その過程がスムーズに行かないのが未熟児あり、そのサポートをするのがNICUチームの仕事であるといえる。

また、現代医学の進歩の偉大さを感じるときでもあった。手のひらサイズの未熟児が数ヶ月間のケアを経て一人前の新生児として母親と一緒に退院していく、そして、その成長をNICUチームに写真や再訪問を通じて知らせてくれる。教科書や知識だけでなく、実際に自分の目で見て、自分がそのケアの一部に加わることでより実感することができた。ほんの数十年前までは残念ながら多くの命を救うことができなかったわけだ。

新生児室では主に指導教官と新生児の基本的な生理学を再復習することで終わった。1週間という短い期間だったのもあるが、すでに100人以上の新生児を自分で見てきた後なのでNICUに比べると得るものは少なかったかもしれない。

最後の週はハンガリー、セルビアへと休暇を使って旅行に出かけた。非常に有意義な旅であり、得るものが多かった。この話はまた別の機会に話せればと思う。

米国レジデントプログラムの特徴のひとつであるが、休暇をしっかりととれることがある。そして、その間はまったくのフリーになれる。年に1ヶ月間ほどあるが、仕事を離れて定期的にリフレッシュしてくることの大切さを日本の研修医たちにもぜひ知ってもらいたいと思う。