|Home|サイトマップ|ファミリーメディスン|外来教育通信講座|IMPACTに挑戦|CHATに挑戦|
|米国家庭医研修・見学に挑戦|家庭医コンサルタント|リンク|お問い合わせ|

家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です

3ヶ月間ほどの休暇を経て、いよいよ米国でのトレーニングを開始しました。最初のヶ月はオリエンテーションで、月からローテーションがはじまります。僕はビザ取得のために 週間ほど今月帰国しなければならず、最初から山あり、谷ありのスタートとなりました。まだ 1週間ほどしか立っていませんが、こちらのレジデントに対する教育の姿勢というものは目を見張るものがあります。具体的に気がついた点を書いていきます。

3年間を共にする同僚たち

今週はこれから3年間を共に過ごす同僚たちとはじめて顔を合わせた週でもありました。毎年SIUでは8名ほどのポジションがあります。今年はアメリカの医学部卒業生3名Tracy, Chris, Kevin、メキシコ医学部卒業のアメリカ人Paul、メキシコ医学部卒でシカゴで1年レジデントを経験しSIUtransferしてきたメキシコ人Maria、生まれはインドで、育ちはアメリカ、医学部はまたインドですでに2年間FPレジデントを経験したが、家庭の事情によりtransferしてきたインド人Deepali、ニュージーランド近くの島国にある医学部を卒業してきたおじさんインド人Lovenderと僕です。それぞれに個性のあるメンバーが集まったようですが、臨床経験からしても医学的知識にしても英語にしても僕が一番足を引っ張っている気がして、何とかまわりに迷惑をかけずにやっていきたいものだなあ、とかなりプレッシャーを感じています。みんなとっても親切で僕が英語を理解できていないときなど分かりやすい英語で説明しなおしてくれます。

1年目のスケジュール

オリエンテーションが始まり、各々のローテーションのスケジュールが発表されました。1年目はオリエンテーション1ヶ月、FPS(family medicine service)3ヶ月、Internal Medicine1ヶ月、ICU1ヶ月、OB2ヶ月、Outpatient Surgery1ヶ月、Orthopedics1ヶ月、Behavioral Science(精神科みたいなもの)1ヶ月、Pediatrics1ヶ月で12ヶ月になります。今週はプログラムによる独自のOSCEがあり、それぞれの臨床能力に応じて最初のローテーションを決めていこうというものでした。OSCEでは様々な形で臨床能力を試されました。例えば、正常分娩を取り上げる方法を人形を使って試験させたり、入院が必要な小児の入院オーダーを全部書かせたり、AMIの患者の心電図の読み方、治療方針、薬の投与量を書かせたり、整形では実際の指導教官がSPとなり、身体所見を取ってみたりと実に多種多様なOSCEを経験しました。そして、American Board of Family Physicianという組織が毎年課題としている筆記試験を早速受けさせられました。同時に、それぞれの教科、技術について自己評価をしていきました。これから3年間で何をどこまでできるようになることが非常に明確に記載されているカリキュラムの本100ページくらいを渡されそれにしっかりと目を通したことのサインも求められました。各科で、自分で対応を求められる疾患、専門医に相談する疾患などが一つ一つ明記されていました。時間があれば具体的な疾患を書いていってこの分野ではこれくらいまでできるように、という目標をみなさんにも伝えて行きたいと思います。

Time Recordがある

すべてのレジデントは毎日の勤務時間を自己申告しなければなりません。そして、毎月提出が義務付けられています。これには様々な理由があるようですが、一つはある一定時間きちんと働いているか、もう一つは働きすぎていないか、ということがあげられるそうです。もちろん、自己申告なので適当に書くこともできますが、ランダムにこれを管理しているオフィスからプログラムや施設に確認の電話が入り、違っている記載をした場合、経歴に大きな傷をつけることになりかねません。また、自己申告を怠るとある一定期間を経た後、プログラムに参加することができなくなってしまいます。つまり、トレーニングを続けられなくなってしまうわけです。Time recordを管理しているオフィスは各プログラムとまったく独立していて、プログラムに対しても様々な権限を持っているようです。これによってドクター11人がオーバーワークしないようテェックされています。こんなことで感動してしまうと思われるかもしれませんが、日本の研修医の現状を考えると、とてもとてもありがたいことです。

休暇について

休暇はレジデントの期間、毎年3週間ほどみとめられています。この3週間を1年目から全部取るべくみんないろいろと考えているようです。23年目は比較的にいつでも休暇を取りやすいのですが、1年目はそれぞれのローテーションで細かく何日まで取れるか厳密に制限されています。例えば、FPS(family practice service、これはFPの患者で入院が必要な人達をケアするチームです)Internal Medicine, Pediatricsでは基本的に休暇が取れません。OBOutpatient Surgeryではいくらでも休暇がとれます。ただし、FPSなどで休暇が1日も取れないといってもこれはVacationの休暇であり、どの科でも最低週に1日の休暇は取れるようになっています。FPSでは当直の翌日は基本的に休みです。

休暇を申請するには最低3ヶ月前に決めることが必要だそうです。指導教官は6ヶ月前が原則だそうですが、みなさんどんなに忙しくても休暇だけはしっかりと取るみたいですね。

はじめてのOn Call

日本へ帰国する前日、はじめてレジデントとしてOn Callを体験しました。患者1人の入院手続きをするのにかなり時間がかかってしまいましたが、最後指導教官に電話でプレゼンするところまで2年目レジデントと医学部4年生のサポートのもと終えたときは一安心。一緒に問診と身体所見を取った医学部4年生の学生の方がよっぽど僕よりも事務的なことを知っていてひたすら質問しまくっていましたね。英語の問題もあり、普通はレジデントがリードして患者と話すところを学生がリードして話していたのではないか、と思うくらい学生は積極的に行動してくれました。SIUのプログラムはどの科でも常に学生がいるわけですが、僕は医学部3,4年生らとほとんど変わらない立場にいると思っています。

伊藤彰洋

2002年7月7日