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家庭医・プライマリケア医のためのアメリカ・米国臨床留学への道
それは一つのとても大きな挑戦です


先月は小児科外来研修の月であった。本来、このローテーションは我々のプログラムではレジデント2年次に割り当てられているのだが、去年はちょうど今まで指導教官をしていてくれた小児科医が引退してしまい、その後任を探している最中ということで3年目も終わりに近づいた今の時期となった。

研修も3年目となり、小児の外来診察も自信をもって行えるようになってからの小児外来研修なので当初はあまり期待を寄せていなかった。しかし、研修をはじめてみると疾患は同じでも微妙に指導教官によりアプローチの仕方の違いや両親や患者への接し方の違いを発見でき、すぐにでも自分の患者に適応できそうなアイディアをいくつか発見し、身につけることができた。

研修場所はCCHC(capital community health center)といっていわゆる政府の援助を受けたフリークニックと呼ばれる、低所得者、無保険者を中心とするクリニックである。ここには専属の小児科医が2人いて、1人で毎日30人前後の患者を診察している。

クリニックは数ヶ月前にリニューアルした建物で以前に比べると格段に広くなっている。しかし、内装は低予算で作られているため、我々のクリニックに比べるとかなり殺風景である。ちなみに、CCHCでの妊娠検診、出産は我々のプログラムが行っている。自分は以前からCCHCに月に2度行っているためCCHCの裏事情にはかなり詳しくなっている。

米国での一般小児外来でよく見る疾患は乳児検診、小児定期健診、喘息、ADHD(attention deficit hyperactivity disorder)、Acute pharyngitis(急性咽頭炎)URI(upper respiratory infection、いわゆる感冒)、AOM(acute otitis media,急性中耳炎)、Bronchitis(気管支炎)、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、ニキビ、外傷などが挙げられると思われる。これだけで外来患者の8割以上の内容をカバーしているのではないだろうか。

逆に言えば、ここに挙げた疾患や検診(乳児検診、定期健診)についてしっかりと学べば小児科外来はまず十分であるように思う。 ここで検診について少し説明しておきたい。米国では乳児、小児定期検診は一般的に生後2週間、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、10ヶ月、12ヶ月、15ヶ月、18ヶ月、2歳、以降1年ごと、となっている。

小児検診については日本でも行われているが、保健所などでまとめて行うということはなく、クリニックでかなり時間をかけて詳細に行う。米国の乳児検診の様子を見馴れると、日本の乳児検診はこのままでよいのか、疑問に思うくらい、質問する内容、チェックする項目が少なすぎる。

小児定期健診はデイ・ケアに子供を預るために必要であり、幼稚園、小、中、高学校に通うためにも必要な検診で米国ではドクターの診察をクリニックで受けなければいけない。この検診でも各々の年代に応じて細かく、小児の発達状況、精神的、身体的な面ばかりでなく、性教育、喫煙、アルコール、違法ドラッグ、両親との適切なコミュニケーションのとり方、年代に適した行動規範など本人と両親と一緒に話し合ったりする。

そういった意味ではこの定期健診は小児においてかなり大切な位置をしめる。 日本でこのような検診をしている小児科医、家庭医をまだ見たことがない自分にとってこの現実はとても残念でならない。日本の集団検診は何とかならないものだろうか。特に小児の場合スクリーニング的に身体所見だけをチェックすればよいものでもない。小児は成人に向かって成長し続ける存在で、それを健康的に導いていくためには優秀な小児科医、家庭医の適切な助言が必要不可欠なのである。 このようなことを改めて感じながら、過ごした1ヶ月であった。